お茶に含まれる成分、味、淹れ方などにも違いがありますし、根本的な違いとして茶葉の栽培方法があります。
- 茶葉の栽培方法
- お茶の成分
- 味わい、香り
- 淹れ方
- 価格
これらの違いをひとつずつチェックしていきましょう!
Contents
1.玉露と煎茶の違い① 茶葉の栽培方法
1-1.チャの樹の品種が違う
お茶の葉がとれる樹木は「チャの樹(学名:カメリアシネンシス)」といい、緑茶をはじめ紅茶や烏龍茶など、ほとんどのお茶はこのチャの樹からとれる葉から作られています。
そしてこのチャの樹は、長年に渡って品種改良がなされており、玉露と煎茶とでは栽培するチャの樹の品種が違います。
品種といわれてもピンと来ない人がいるかもしれませんが、お米をイメージするとわかりやすいです。
同じ稲でも「ササニシキ」「コシヒカリ」など様々な品種がありますよね。日本茶を作るチャの樹の場合ですと、煎茶用、玉露・碾茶用、釜炒り茶用の3つの品種に大別できます。
ちなみに、農林水産省の品種登録ホームページで「茶種」を調べてみたところ、2020年1月9日時点で77種類登録されていました。
1-2.被覆栽培の有無
玉露と煎茶の違いで、もっとも大きな違いが茶葉の栽培方法にあります。
煎茶の場合、茶葉にたっぷりと太陽の光を浴びせていますが(露天栽培)、玉露の場合はチャの樹に覆いを被せて日光を遮る「被覆栽培」が行われます。なぜこのようなことをするかというと、
- 光合成を遅らせて、新芽の成長を抑える
- 新芽の成長を抑えることで、摘み取る期間を長くできる
などがありますが、一番の理由は、お茶の品質を高めるためです。
覆いを被せておくことで、茶葉の成分がどう変わるかは「2.玉露と煎茶の違い② お茶の成分」で詳しく説明します。
1-3.生葉の摘み方が違う
チャの樹から葉を採ることを「摘採(てきさい)」といい、摘んだ葉のことを「生葉(なまは)」といいます。
摘採の方法には、「手摘み」「手鋏」「摘採機」があり、それぞれの特徴は以下の通りです。
手摘み
- 人の手で一つずつ摘み取っていく
- 生葉の品質は最高だが、手間がかかる
- 玉露や碾茶など自然栽培の茶園や上質茶の摘採で行われる
手鋏
- ハサミを用いる
- 手摘みより効率は良いが難しい
- 機械を使いづらい傾斜のきつい茶園などで行われる
摘採機
- 摘採専用の機械を使う
- 2人で持つタイプ、乗用するタイプ、自走式タイプなどあり
- 最も効率が良い
玉露と上級煎茶は手摘み、煎茶は摘採機で摘採されるケースが多いです。
1-4.製造工程は一緒
チャの樹の品種、栽培方法、摘採方法に違いがありましたが、生葉をお茶に仕上げる製造工程に関しては玉露と煎茶とに違いはありません。
玉露と煎茶とで価格が違うのは、生葉を採るまでに多くの労力が注がれているからなんですね。
2.玉露と煎茶の違い② お茶の成分
日本茶には様々な健康成分が含まれていることは周知の事実です。玉露と煎茶とでは健康成分にも違いがあるのですが、その違いが生まれるのは被覆栽培にあります。
覆いを被せておくことで、うま味成分のテアニンの減少を抑えられます。テアニンは日光を浴びるとカテキンに変質する性質があるため、渋味苦味のもととなるカテキンの少ない茶葉になります。
また、被覆することによって苦味のもととなるカフェインは増加します。日本茶(緑茶)に含まれている健康成分について詳しく知りたい方は、次の記事が参考になります。
ちなみに、玉露にはジメチルスルフィドという香り成分が多く含まれています。
この匂いは被覆することによって出てくることから「覆い香」といわれ、磯の香りや青海苔のような匂いがします。
3.玉露と煎茶の違い③ 味わい、香り
玉露と煎茶の成分に違いがあるということは、当然ながら風味も変わってきます。
玉露
- 高級な青海苔のような香り
- うま味と甘味が強く、渋味と苦味が弱い、まったりとした甘み
- 水色(すいしょく)は透明に近い黄色
煎茶
- 爽やかな緑の香り
- うま味、渋味、苦味のバランスがとれた味
- 水色(すいしょく)は黄色がかった緑色
4.玉露と煎茶の違い④ 淹れ方
玉露と煎茶とでは淹れ方にも違いがあります。せっかくですから美味しい飲み方をマスターしておきましょう!
日本茶はお湯の温度と浸出時間によって、味に変化が生まれます。
カテキン(渋味、苦味):お湯が熱いほど出てくる
カフェイン(苦味):お湯が熱いほど出てくる
テアニン(うま味、甘味):お湯の熱さに影響されない。浸出時間が長いほど出てくる
お茶の味を決める成分にはこのような特徴があるので、ぬるいお湯でじっくり浸出させるとうま味甘味の強いお茶になり、熱めのお湯でさっと淹れると渋味のきいたさっぱりしたお茶になります。
4-1.玉露の淹れ方
一人前の目安:玉露2g、お湯20ml
ワインのテイスティングで口に含むときと同様、少量を口の中で転がすようにして風味を感じるのが玉露の楽しみ方。
煎茶を淹れるよりも少ない量のお湯で十分なので、小さめの茶器を用意しましょう。
うま味成分のテアニンは低い温度でも溶けますが、渋味成分のカテキンは低温だと溶け出しにくい特徴があります。うま味をじっくり味わう玉露の場合は、50〜60℃くらいが適温とされています。
4-2.煎茶の淹れ方
一人前の目安:煎茶2g、お湯70ml
煎茶の中にも普通煎茶や深蒸し煎茶、それぞれの品質があるため、それぞれに適した淹れ方をマスターできたら最高です。
うま味成分の多い上級煎茶は70℃くらいのお湯で1〜2分ほど浸出させましょう。
中級の煎茶であればちょっと高めの80℃くらいのお湯で1分ほど浸出させるといいでしょう。基本の淹れ方をマスターしたら、お湯の温度と浸出時間を色々試してみて自分好みの風味を探してみるのもいいですね!
5.玉露と煎茶の違い⑤ 価格
茶種 |
100gあたりの価格 |
玉露 |
2,000円〜54,000円 |
煎茶 |
500円〜30,000円 |
この記事の冒頭で書きましたが、玉露と煎茶の違いとして一番最初に出てくる答えが価格の違いかと思います。
上の表はそれぞれの100gあたりの価格なのですが、玉露も煎茶もピンからキリまであり、リーズナブルな価格帯ですと価格差は4倍ほどあります。
玉露の54,000円、煎茶の30,000円の商品はどちらも、毎年開催されている全国茶品評会で入賞した最高級品です。
6.日本茶(緑茶)の種類
玉露と煎茶の他にも、日本茶(緑茶)には様々な種類があります。せっかくですから他にどんな種類のお茶があるのか見てみましょう。
6-1.玉露
日本茶の中で最上級に位置するのが玉露です。被覆栽培によって生まれる覆い香がたちこめ、とろっとした口当たりから、まったりとした甘みが口中に広がります。
ちなみに玉露の茶葉はとても柔らかいため、茶殻を食べることもできるんです。ポン酢をかけたり塩をふって、おひたし風にするのがおすすめ。
6-2.煎茶
最も飲まれている日本茶。日本茶に詳しくない人が緑茶を想像すると浮かんでくるのがこの煎茶で、一般的に「お茶」といえば煎茶を指します。
製造工程の中で、蒸す時間によって煎茶の種類が変わります。蒸す時間が標準的なものを「普通煎茶」、普通煎茶より2〜3倍長くしたものを「深蒸し煎茶」と呼びます。
6-3.かぶせ茶
チャの樹に覆いを被せる被覆栽培をするのが玉露の特徴でした。かぶせ茶とは、簡易的に覆いをかけて煎茶に玉露の特徴をもたらしたお茶になります。
玉露よりリーズナブルなので、玉露がどんな味なのか興味がある人は、煎茶→かぶせ茶→玉露といった感じで飲み比べていくのもいいですね。
6-4.玉緑茶
九州地方でよく飲まれている日本茶。煎茶は乾燥させて針状の形に仕上げますが、この玉緑茶は勾玉のような形に製造されています。
玉緑茶は二種類あり、摘み取った茶葉を鉄製の釜で炒るのが「釜炒り製玉緑茶」、茶葉を蒸すのが「蒸し製玉緑茶」といいます。色味は黄緑色で、渋味苦味が少なくさっぱりとした飲み口。
6-5.碾茶
玉露と同じ被覆栽培で育った茶葉をつかった、抹茶の原料になるお茶です。製造工程の中で揉む工程がなく、蒸す時間が短めなのが特徴。
最後に石臼で挽いて抹茶に仕上げます。ちなみに、碾茶の「碾」という字は、ひく、うすでひく、といった意味があります。
6-6.番茶
一般的な家庭でよく飲まれている日本茶です。
チャの樹から出てきた最初の新芽を摘んだものを一番茶、その次に摘んだものを二番茶というのですが、夏の時期の三番、四番目に摘んだ生葉や、伸び過ぎた新芽などからつくられたのが番茶になります。
もともと番茶は「晩茶」といわれていて、遅い時期に摘採したお茶のことなんですね。苦味渋味甘味いずれも薄く、さっぱりした味です。
6-7.ほうじ茶、玄米茶(再加工茶)
番茶などの下級のお茶を加工したお茶にほうじ茶、玄米茶などがあります。
茶褐色になるまで強火で焙煎したのがほうじ茶、炒ったお米と番茶などを半々にブレンドしたのが玄米茶です。
どちらも独特の香ばしさがあり、さっぱりとした味わいです。
7.まとめ
玉露と煎茶の違いについて理解できたでしょうか。同じ緑茶というくくりの中でもこれだけの違いがあるんです。
一人でも多くの方が、色んなお茶を楽しみながら緑茶の世界にどっぷりハマってくれたら最高です!